2008年5月17日土曜日

『スーパーコンピューターを20万円で創る』

 随分、久し振りに風邪でダウンしてしまった。前日の午前中から熱が上がり始める気配がして、夕方には微熱状態に。途中、急に身体がだるくなってきて節々が痛み出したので「もしや?」とは思っていたのだけど…特にひどく咳き込んだり、はなが出たりってこともなかったので気のせいだと思いたかったし…でも、実際は着実に病状は進行。仕事がヒマだったこともあったので早退して熱を計ったら38.7℃。気休めに市販の風邪薬もどきを飲んで寝たものの、翌朝も38.0℃。気合いで出勤して仕事を…と思ったものの、多くの人と接する機会がある仕事上、他人にうつしてもまずいと思い直し病休の連絡。

 家人と一悶着した後、しぶしぶ病院へ行って帰ってきたら職場からご丁寧に「インフルエンザも流行っているので、必ず病院へ……」と留守電が…(もっとも気がつかず夕方まで放置してしまい、帰ってきた家人に指摘される始末になってしまった)。

 そうはいっても唯寝ているってことも難しいことで、本を読んで時間を潰すことに…。こんな時なのであまり頭を使わずに済みそうなものを…ということで「スーパーコンピューターを20万円で創る」(集英社新書)を読んでみる(買ってから随分本棚の肥やし状態で放置されていたもののひとつだったりする…)。

 その昔、大変面白いと思いながら連載を読んでいた「栄光なき天才たち」の原作者が本書の天文学専用コンピューター制作ドキュメンタリー作者と同一ということにちょっとびっくり。本文にもあったが、あのシリーズが単行本化され、それなりに人気を博したことは書店の棚を眺めて気がついていたが、その背後のエピソードは想像不能であった。確かに、原作者が必ずしもマンガ業界べったりであるとは限らないわけで、アルバイト的な原作者がいてもおかしくはない。もっとも、そうはいっても普通はそういうことは起こらないので、落ちても落ちても投稿し続ける粘りと、その過程で相応に筆力が向上するだけの才能に恵まれていたのであろう。そのように自らの能力を成長させていく力は、分野が違っても発揮されたようで、まったくの素人であったコンピューターにおいても新機軸を打ち立てることに成功する。まあ、半ばセミプロであった人物が、自分のことを軸に展開するストーリーな訳で、実際飽きさせることなく、最後まで読まされてしまった。

 「ゼロから1を作り出す研究」と「1を10にする研究」、「世界一の研究を成し遂げるには方法が二つある。一つは世界一頭が良くなること。もう一つは世界中で誰もやっていないことをやること」。研究者の心構えを示す語録としてたびたび登場したフレーズ。一面の真理を突いた、大変魅力的なことばではないだろうか。同工異曲のフレーズがあることは承知しているが、当事者たちの心情と置かれた状況にマッチした表現として、このドキュメンタリーに色を添えているものといえよう。そして、天文の世界を前提に開発された同じ装置が人間の遺伝子情報を元にしたタンパク質合成のシミュレーションに向けても改良されていくということを知り、さらに今後の展開に興味が惹かれる。続編を期待する次第である。

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